「今日の日本のカトリック教会」をテーマにした菊地功大司教の講演 2024年10月4日 ローマ、国際カリタス本部 「今日の日本のカトリック教会」をテーマにした菊地功大司教の講演 2024年10月4日 ローマ、国際カリタス本部 

菊地大司教、今日の日本の教会についてローマで講演

シノドス参加のためローマを訪れている菊地功・東京大司教は、国際カリタス本部で「今日の日本のカトリック教会」をテーマに講演を行なった。

 日本のカトリック教会の今日の情勢をめぐる講演が、ローマで10月4日、東京大司教、日本カトリック司教協議会会長、菊地功大司教によって行われた。

 菊地大司教は、バチカンで開催中の「世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会・第2会期」(10月2日−27日)に参加のため、目下ローマを訪れている。

 「今日の日本のカトリック教会」と題されたこの講演会は、在バチカン日本国大使館の主催で、国際カリタスの協力のもとに、トラステヴェレ地区にある同組織の本部で開かれた。菊地大司教は、2023年5月より国際カリタス総裁を務めている。

 講演に先立ち、千葉明・駐バチカン日本国特命全権大使より挨拶があった。

 続く講演の冒頭で、菊地大司教は、東北のある小教区を司牧訪問した際に撮影した一枚の集合写真を映し出した。

 多くの外国出身の信者と、わずかな日本人の信者で構成されたこの共同体の写真を、今日の日本のカトリック教会を表す一例として示しつつ、様々なデータと共に「リアル」な日本の教会の姿をいろいろな角度から紹介した。

 菊地大司教は、現代の日本のカトリック教会へとつながる教会史を振り返り、1549年のフランシスコ・ザビエルの到来から始まった福音宣教、その開花も間もなく、北から南まで日本全土を吹き荒れた迫害と殉教、その後、長く厳しいキリスト教の禁教とキリシタン潜伏の時代を経て、1862年に訪れた、プチジャン神父による信徒発見など、日本の教会の歴史に刻まれた主な出来事をたどった。

 同大司教は、信徒発見以降の日本の教会の歩みを見つめる中で、宣教師たちが、隠れているキリシタンたちを困難を伴いながら探し求め続けるよりも、教育を通しての宣教に重点を移すことを決意した1890年を、日本の宣教における優先事項のターニングポイントと位置付け、実際、この教育分野への取り組みが、日本の各界にカトリックの人材を輩出することになった、と述べた。

 そして、講演では、1873年の高札の撤廃によって、キリスト教禁制が廃止されると、すぐ翌年、東京では築地教会と神田教会が設立されるなど、再出発していく日本のカトリック教会の姿が映し出された。

 こうした歴史に続いて、菊地大司教は、日本におけるカトリック教会の諸教区の分布とその管轄を紹介。

 各教区が置かれた環境がそれぞれ異なることを示すために、首都圏を中心とした東京大司教区、地方の教区である新潟教区、元々カトリック信者が多い長崎大司教区の、信者数や、人口比、小教区数などの統計を比較した。

 今日の日本の教会のリアルな姿を反映するものとして、菊地大司教は、かつて司教として司牧を託されていた新潟教区、また現在司牧している東京大司教区の小教区の例を語った。

 同大司教は、新潟教区に属する秋田県のある小教区をかつて司牧訪問した際に、当時の主任司祭から、「今日は大勢の信徒がいる」と聞いたが、聖堂に入ると10人くらいしかいなかったというエピソードを回想。

 シノドスでも様々な大陸・地域の参加者が皆「小教区」という言葉を何度も口にするが、その各々の「小教区」の環境や条件は全く異なるゆえに、地域の現実を尊重することが大切であると話した。

 また、菊地大司教は、特に地方においては神道や仏教の存在感が強く、カトリック系の学校や病院等が整っていても、なおかつ宣教が難しいのは、キリスト教には献身が求められるからだと推測。

 たとえば、キリスト教は毎週日曜日にミサに行かなければならないが、神道や仏教では、神社や寺には行きたい時、必要な時に行くという大きな違いがある。たとえ多くの日本人が宗教の必要を感じていなくても、実際には、日本人は本来非常に宗教的な人々である。しかし、こうしたコミットメントの要求が日本におけるキリスト教の広がりを難しくしている、と語った。

 別の問題として、同大司教は日本における人口の減少と、社会の高齢化、少子化を挙げ、これらの問題がカトリック教会にも影響を及ぼしていると述べた。

 一方で、日本には、中国人、韓国人、フィリピン人、ベトナム人、ブラジル人などの、定住者や、労働ビザで来日した人々等、移民の存在があり、その中に多くいるカトリック信者たちが、現在の日本のカトリック教会に活気を与えていると述べた菊地大司教は、その様子を、地域のフィリピン人たちの共同体の努力から創立された新庄教会(新潟教区・山形県)の例を交えて伝えた。

 さらに、今年4月に行われた日本の司教らのバチカン定期訪問(アド・リミナ)の写真を提示した同大司教は、この定期訪問に参加した17人の司教のうち5人を占める外国からの司教たちに言及、司教団も国際化している点を明らかにした。

 菊地大司教は、東京大司教区の小教区を核に形成された様々な外国人信者の共同体や言語別のコミュニティーを紹介しながら、多様性における一致という大きな課題を示した。

 タグレ枢機卿(教皇庁福音宣教省・初期宣教部門副長官)が、海外にいるフィリピン人たちに会うたびに話す、「あなたがたがここにいるのにはそれぞれ理由があります。皆さんは神様に遣わされました。皆さんは宣教者です」という言葉を同大司教は引用。これは日本のカトリック信者にも言えることと指摘した。

 最後に、菊地大司教は、東日本大震災の被災地のベースでカリタスジャパンが根強く復興支援の活動を続ける中で、人々がカリタスのボランティアを「カリタスさん」と呼ぶようになった、と語り、人々が「カリタス」(神の愛)とはどういう意味かを問うことで、それは福音宣教の一つの形になっていくだろうと強調した。

05 10月 2024, 18:06