教皇フランシスコ 2024年6月5日の一般謁見 バチカン・聖ペトロ広場 教皇フランシスコ 2024年6月5日の一般謁見 バチカン・聖ペトロ広場  (VATICAN MEDIA Divisione Foto)

「思いのままに吹き自由をもたらす聖霊」教皇一般謁見

教皇フランシスコは、6月5日(水)、バチカンで一般謁見を行われた。

 教皇フランシスコは、6月5日(水)、バチカンの聖ペトロ広場で、水曜日恒例の一般謁見を行われた。

 謁見中、教皇は先週から始まった「聖霊と花嫁。聖霊は神の民をわたしたちの希望イエスとの出会いへと導く」を主題とするカテケーシスの第2回として、「風は思いのままに吹く。主の霊のおられるところに自由がある」(参照 ヨハネ3,8、2コリント3,17)をテーマに話された。

 教皇のカテケーシスの要旨は次のとおり。

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 今日のカテケーシスでは、聖霊が聖書中で呼ばれている名前について考えてみたい。

 わたしたちがある人物について最初に知ること、それは名前である。わたしたちはそれによってその人を呼び、認識し、記憶する。聖三位一体の三番目のペルソナも名前を持っている。それは聖霊である。しかし、聖霊を指す「スピリトゥス」という呼び方はラテン語化されたものである。最初に聖霊を啓示された人々が知った名前、預言者や、詩編作者、マリア、イエス、使徒たちが呼び祈った名前、それは風や息を意味する「ルーアハ」という名であった。

 聖書において、名前はその人物と同化されるほど重要なものであった。神の名を聖なるものとすることは、神ご自身を聖なるものとし、敬うことであった。名前は単に一般的な呼称ではなく、常に個人的な何か、その起源や、使命を物語っている。「ルーアハ」も同様に、聖霊のペルソナの本質を啓示し、その役割を示している。

 聖書を記した人々が神に導かれ「風」の様々な性質を発見したのは、まさに風とその現象を観察することによってであった。聖霊降臨の際、聖霊が「激しい風が吹いてくるような音」(参照 使徒言行録2,2)を伴い、使徒たちの上に降りてきたのは偶然ではない。それは、あたかも聖霊がそこで起きていることにご自分の名を記すかのようであった。

 ところで、聖霊の「ルーアハ」という名の意味するものは何であろうか。風のイメージは、何よりも神の霊の力を表現するのに用いられている。「聖霊と力」あるいは「聖霊の力」という表現にあるように、聖霊と力は、聖書全体を通して対になっている。実際、風は圧倒的で抑えがたい力であり、それは海をも揺さぶる力である。

 しかし、この場合も、聖書的な完全な意味を見出すためには、旧約聖書にとどまらず、イエスにまで到達しなくてはならない。イエスは風について「力」の他に、もう一つの性質を付け加えておられる。それは風の「自由」という性質である。イエスは夜訪ねて来たニコデモに、「風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞いても、それがどこから来て、どこへ行くかを知らない。霊から生まれた者も皆そのとおりである」(ヨハネ3,8)。

 風は、制御して瓶や箱に詰め込めない唯一のものである。聖霊を捕らえて概念や定義の中に閉じ込めることは、それを失うか、人的な霊に縮小してしまうことになる。教会の中にも、聖霊を教会法や制度や定義の中に閉じ込めようとする同じような誘惑がある。聖霊は組織を作り、活気づけるが、聖霊そのものを組織化することはできない。風は「思いのままに」吹くように、聖霊はご自分の賜物を「望むままに」分け与えられる(参照1コリント12,11)。

 聖パウロは、キリスト者の行動の本質的な掟のために全力を尽くした。聖パウロは言う。「主の霊のおられるところに自由があります」(2コリント3,17)。これは一般に考えられている自由とはまったく異なる、特別な自由である。それは自分の望むままに振舞う自由ではなく、神が望まれることを自由に行うための自由である。善か悪かを行う自由ではなく、善を行う自由、それを強制ではなく魅力によって自由に行うための自由である。別の言い方をすれば、それは奴隷ではなく、子の自由である。

 パウロはこの自由が悪用されたり、誤解される危険をよく自覚していた。事実、パウロはガラテヤの信徒への手紙でこう記している。「兄弟たち、あなたがたは、自由を得るために召し出されたのです。ただ、この自由を、肉に罪を犯させる機会とせずに、愛によって互いに仕えなさい」(ガラテヤ5,13)。

 エゴイズムの自由さと異なる、この聖霊の自由さをどこから汲み取ったらよいだろうか。その答えはイエスの言葉の中にある。「もし子があなたたちを自由にすれば、あなたたちは本当に自由になる」(ヨハネ 8,36)。イエスに、聖霊を通して真に自由な者にしていただけるよう祈ろう。愛と喜びのうちに奉仕するための自由を祈り求めよう。

05 6月 2024, 13:27