世界平和の日メッセージ:教皇「兄弟愛のもと、互いにいたわり合う文化を」
来年1月1日に記念される「第54回世界平和の日」に向け、教皇フランシスコのメッセージが発表された。
2021年度のテーマは、「いたわりの文化、平和への道のり(仮訳)」。教皇は、全9章からなるメッセージを通して、すべての人の尊厳と善を守り育てる、ケアしいたわる文化を、平和構築のために優先すべき道として示している。
教皇は、2020年を特徴づけた新型コロナウイルスによるパンデミック危機は、多分野間に相互的影響を及ぼしながら、世界規模の深刻な現象となっていった、と振り返った。
このパンデミックにより家族や大切な人を亡くした人々、仕事を失った人々に、教皇は思いを寄せると共に、時には命さえ犠牲にし、病者に寄り添い続ける医師や、看護師、薬剤師、研究者、ボランティアの人々を特別な形で思い起こされた。
このような多くのいつくしみと連帯の証しの傍らで、国粋主義や、民族主義、外国人嫌悪、さらには、死と破壊をもたらす戦争を見出したことは悲しいことである、と教皇は述べた。
そして、この過ぎた一年の様々な出来事は、兄弟愛に基づく社会を築くために、互いに思いやりを持ち、被造物を大切にすることの重要さを教えてくれた、と教皇は記し、いたわりの文化を、無関心や、切り捨て、対立の文化に打ち勝つためのものとして示された。
教皇はこのメッセージで、神がエデンの園を人に託し、そこを耕し、守るように命じられたエピソード(参照:創世記2,15)に、人間の「守り、世話する」という使命を、また、カインとアベルの物語の、弟アベルを殺した後で、「お前の弟アベルは、どこにいるのか」と主に聞かれ、アベルが「知りません、わたしは弟の番人でしょうか」(参照:創世記4,9)と答えたその問答に、他者への兄弟愛、正義、誠実を不可欠とする人間の本質を見つめられた。
さらに、教皇は、御父の人類に対する愛の最も崇高な啓示として、イエスの生涯と使命を指し示し、病者を癒し、罪びとを赦し、新しいいのちを与えるイエス、善き牧者、善きサマリア人の姿そのものであるイエス、使命の頂点にわたしたちを罪と死への隷属から解放するために十字架上で自らを捧げられるイエスを観想された。
初代教会の時代から、霊的・物的ないつくしみの業は、愛の奉仕の中心をなすものであった、と教皇は思い起こしつつ、今日、教会が取り組むべき「いたわりの文化」の基礎として、「人間の尊厳と権利の促進」「共通善」「連帯」「被造物の保護」を挙げられた。
「いたわりの文化」を築く上で必要なこのような社会原則に基づく「羅針盤」は、兄弟愛や、相互尊重、連帯、国際法の順守などの精神を理想とする、国家間の関係にも適用されるもの、と教皇は述べた。
紛争の原因は様々であるが、その結果は常に同じ、破壊と人道危機である、と述べた教皇は、核兵器をはじめ、武器に浪費される資金を、平和の推進、人類の統合的発展、貧困との闘い、医療の保証のために利用することができる、と説かれた。
教皇は、「いたわりの文化」を育むために、教育的プロセスの必要を示しながら、家庭、教育機関、メディア、そして宗教が負う重要な役割を指摘された。
今日の危機によって人類を乗せた船が嵐に揺さぶられる中、人間の尊厳を「舵」に、社会の基本的原則を「羅針盤」にすることで、わたしたちの船は正しく共通の航路をもってう航海することができるだろう、と教皇は述べた。
そして、兄弟として受け入れ合い、互いにいたわり合う共同体を築くために、毎日具体的に取り組んでいこう、と、教皇はすべての人に呼びかけられた。