教皇、イラクのカトリック教会関係者に励まし
教皇フランシスコは、イラク訪問初日、現地時間3月5日午後、バグダッド市内のシリア典礼カトリック教会のカテドラルで、同国の教会関係者との集いに出席された。
バグダッド到着後、大統領、首相、各界要人らと会見された教皇は、夕方、カトリック教会関係者らと初めての出会いを持たれた。
集いの会場となったこのカテドラルは、「救いの聖母」に捧げられたもので、バグダッドで最も大きい教会の一つである。同カテドラルはこれまで二度にわたりテロ攻撃の標的となった。特に2010年10月31日に起きた過激派組織ISによる攻撃により、司祭2名を含む48人が死亡、およそ70人が負傷した。事件後、カテドラルは修復され、犠牲者らの追悼碑が作られた。
イラク戦争以前は、シリア典礼カトリック教会に属するおよそ5000家族がこのカテドラルに定期的に通っていた。しかし、戦争やテロの影響で、多くの信者が国内の他地域や海外に流出し、2018年の段階で、バグダッド市内の同典礼の3つの教会に通う信者の家族数は、合わせて1000家族以下に減少したという。
この日、教皇との待たれた出会いには、イラクの諸典礼の司教、司祭、修道者、神学生、カテキスタらが多数参加した。
メソポタミア地域におけるキリスト教徒の起源は、使徒言行録にも記されるように、キリスト教の起源そのものにさかのぼる。イラクの地は、聖書学的、教会史的に、またその宗教的・文化的豊かさによって、キリスト教徒にとって重要な意味を持ってきた。
今日、イラクのカトリック教会は、カルデア典礼、シリア典礼、アルメニア典礼、ラテン典礼、メルキト典礼によって構成される。現在、カトリックの信者は全人口の1.5パーセント、およそ59万人である。
教皇はこの出会いで、まさに多様な典礼からなるイラクのキリスト教共同体を、神が様々な糸を用いて芸術的に織り出した「絨毯」にたとえ、それぞれが独自の歴史・典礼・霊性を保ちながらも、一つの祈り、一つの精神、一つの希望と愛のもとに、兄弟姉妹として常に一致するようにと、関係者らに願われた。
教皇は、このカテドラルを襲ったテロの犠牲者らを追悼すると共に、キリストと教会への忠実のために命を捧げた多くの人々のこれまでの犠牲を思い起こされた。
そして、これらの人々の犠牲を思い出すことにより、
キリストの十字架の力、赦しと和解と再生のその救いのメッセージへの信頼を新たにするよう、励まされた。
教皇は、イラクのキリスト教徒たちが日々直面する試練と、その影響による信者の流出の問題に触れつつ、信者たちのそばに留まり、人々の必要に応えながら、共通善への奉仕を続ける司教や司祭たちに感謝の言葉を述べられた。
また、教皇は、イラクの教会の未来にとっての「はかり知れない宝」である若者たちと、「国の貴石、最も味わい深い実」であるお年寄りを、共に大切にするよう、司牧者らに願われた。
教皇は、イラクの教会が小さくとも一粒のからし種のように、国と歩みを共にしながら、その歩みを豊かなものにしていくようにと、すべての関係者を力づけられた。