教皇のイラク訪問:ウルで諸宗教代表者との集い
教皇フランシスコのイラク訪問は、3月6日(土)、2日目を迎えた。
同日早朝、バグダッドからおよそ160㎞南のナジャフを訪れた教皇は、同地でイラクのイスラム教シーア派の最高権威、サイード・アリ・シスタニ師と会見された。
この後、教皇はさらに南方のナシリヤに移動。そこから約24㎞郊外のウル遺跡に向かわれた。
ウルは、かつてメソポタミア南部に位置した古代都市。旧約聖書の「創世記」には「カルデアのウル」と記され、父祖アブラハムの生誕の地と言われている。
遺跡の一角で行われた諸宗教代表者の集いでは、創世記やコーランの一節が朗読された。
また、キリスト教、イスラム教、マンダ教の信者らが、すべての人を傷つける戦争や暴力への反対と、宗教を超えた友情の体験、相互尊重と平和ある共存への思いを語った。
教皇は挨拶の中で、アブラハムが生まれ、神の声に従い旅立ったこの場所から、共にアブラハムを父祖として尊ぶ、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、そして他の宗教の人々が、互いを兄弟姉妹として、アブラハムと同じように天の星を見つめながら、平和の道を共に歩んでいけるようにと、呼びかけられた。
真の宗教性とは、神を礼拝し、隣人を愛すること、と述べた教皇は、今日の世界はしばしば神を忘れ、その誤ったイメージを与えようとするが、神を信じる者は、兄弟愛を通して、神の愛と父性を証しするよう招かれている、と語った。
また、教皇は、神はいつくしみ深い方であり、神の名のもとに兄弟を憎むことは、最も冒涜的なことである、と話した。
イラク北部でテロによって破壊された教会の修復を、イスラム教徒のボランティアの若者たちが手伝ったエピソードを思い起こされた教皇は、このような暗い闇の時にも星は輝いている、と話し、すべての聖なる場所が皆の平和と出会いのオアシスとなるよう、父祖アブラハムの助けを願った。
天はわたしたちが歩むべき道として、平和の道を示している、と教皇は強調しつつ、人類家族がすべての子らを受け入れ、同じ天を見つめ、同じ地平を平和のうちに歩んでいけるようにと祈られた。
そして、アブラハムの子らとしての祈りを神に捧げた教皇は、自分たちの心を神とすべての兄弟たちに開くことができるように願うと共に、イラクの復興と発展のための助けを祈り求めた。