イラク訪問:教皇、モスルで紛争の犠牲者のために祈る
教皇フランシスコは、イラク訪問3日目を迎えた3月7日、同国北部に赴いた。
同日早朝、バグダッドから特別機でクルド自治区の中心都市アルビルに到着した教皇は、空港内でネチルバン・バルザニ大統領およびマスルール・バルザニ首相と相次ぎ会見した。
同日午後アルビルの競技場でとり行われるミサに先立ち、教皇はヘリコプターでモスルへと向かった。
モスルは、2014年から2017年にかけて過激派組織ISに占領された。占領から解放までの激動の期間、人命はもとより、家屋、市民生活、社会・経済機能、文化遺産など、膨大な犠牲を払うことになった。
2004年に人口およそ185万人であったモスルから、この期間に、キリスト教徒12万人以上を含む、約50万人の住民が他地域や国外に避難した。
解放後の現在、モスル市民は国際社会の協力を得ながら復興という大きな挑戦に立ち向かい、難民となった人々の帰還のために努力している。
教皇が訪れたモスル市内の広場には、かつてシリア典礼カトリック教会、アルメニア正教会、シリア正教会、カルデア典礼カトリック教会の4つの教会が建っていた。これらの教会は、2014年から2017年の間のテロ攻撃で破壊された。
紛争の爪痕を残す広場に到着された教皇は、悲劇から立ち上がり復興に取り組む人々の証言に耳を傾けられた。
モスルの小教区で主任司祭を務める神父は、モスル解放後、市内に戻り、破壊された教会の再建に取り組む中、イスラム教徒の市民たちの温かい協力と友情を体験した、と語った。
教皇は、「神はいのちの神である。それゆえ神の名のもとに兄弟を殺すことは許されない。神は平和の神である。それゆえ、神の名のもとに戦争は許されない。神は愛の神である。それゆえ、兄弟を憎むことは許されない」と呼びかけつつ、モスル、イラク、そして中東全地域の、すべての紛争の犠牲者を神の憐みに委ねて祈った。
そして、教皇は、神の御目にはわたしたちはすべて兄弟姉妹であるという自覚をもち、宗教の違いを超えて、皆が平和と協調のうちに生きることができるようにと、神に祈りを上げられた。