ギリシャ:教皇「パウロに倣い、神に信頼して前に進もう」
教皇フランシスコは、12月4日(土)、訪問先ギリシャのカトリック教会の関係者とお会いになった。
この日の夕方、アレオパゴスの聖ディオニシオに捧げられた、アテネのカトリック教会のカテドラルには、同国の司教・司祭・修道者・助祭・カテキスタらが集った。
ギリシャでは、全人口の約86%をギリシャ正教会の信者が占め、カトリック信者は1.22%と少数派である。
ギリシャ司教協議会は、ラテン典礼と東方典礼の司教から構成されている。
この出会いで、西洋の基礎を築いたギリシャの偉大な文明に触れた教皇は、初期のキリスト教は、この豊かな文明の中で、信仰のインカルチュレーションの「実験場」を開始したと述べた。
ギリシャ文明とキリスト教の出会いの実験場において、多くの教父たちがその聖なる生き方と著作を通して貢献したが、その実験に最初に着手したのは、使徒パウロであった、と教皇は話した。
教皇はアテネにおけるパウロの宣教に二つの特徴を見出し、それを今日の宣教において模範とするように示した。
まず一つの特徴は「神への信頼」である。パウロがアテネで人々と討論していた時、哲学者の中には、「このおしゃべりは、何を言いたいのだろうか」(使徒言行録17,18)と言う者もいた。彼らはパウロをアレオパゴスに連れて行き、その教えについて問いただした。
教皇はアレオパゴスに連れて行かれたパウロの状況を想像するようにと勧めた。たった一人で、少数派の論者として、成功の見込みはないことはわかっていても、パウロはおじけづくことなく、宣教を決して諦めなかった、と教皇は語り、そこに「神に信頼して前に進む」という真の使徒の特徴を指摘された。
教皇は、イエスは小さき者や貧しい者を選ばれ、彼らがその謙遜さを通して歴史を変えていったように、小さな教会であることは雄弁な福音的しるしである、と述べ、パウロのように神に信頼し、世の中に、からし種、パン種となって静かに成長していくことを召命とするよう招かれた。
教皇は、アテネにおけるパウロの宣教姿勢のもう一つの特徴として、「相手を受け入れる態度」を挙げられた。
パウロは、頭ごなしに教えを説くのではなく、アテネの人々の宗教精神を受け入れた。
パウロは、「アテネの皆さん、あらゆる点においてあなたがたが信仰のあつい方であることを、わたしは認めます。道を歩きながら、あなたがたが拝むいろいろなものを見ていると、『知られざる神に』と刻まれている祭壇さえ見つけたからです」(使徒言行録17,22-23)と言い、相手の尊厳を認め、その宗教的感受性を尊重している点に、教皇は注目。
今日、わたしたちにも人間性・文化・宗教の違いの中で、交わりを育てようとする熱い心、受け入れの態度が必要とされている、と説かれた。
アテネでパウロが福音を告げた時、多くの人はあざ笑い、去っていったが、「しかし、彼について行って信仰に入った者も、何人かいた。その中にはアレオパゴスの議員ディオニシオ…もいた」(使徒言行録17,34)。
多くの人は去っていったが、その時残ったディオニシオに、このカテドラルが捧げられていることに、教皇は感慨を表された。
わずかに残ったものから、神は今日まで歴史を織り出されてきた、と述べた教皇は、ギリシャのカトリック教会がこの歴史的な信仰の実験場で働き続けることを心から願われた。