世界病者の日:「人間の統合的な癒しを」教皇、ビデオ会議で
カトリック教会は、毎年ルルドの聖母の日、2月11日に、「世界病者の日」を記念する。
「世界病者の日」は、病者がふさわしい援助を受けられるように、また苦しむ人が自らの苦しみの意味を受け止めていくための必要な助けが得られるように、カトリックの医療関係者はもとより、全教会、社会に広く関心を呼びかけることを目的としている。
聖ヨハネ・パウロ2世によって、1993年に創設されたこの記念日は、今年で第30回目を迎えた。
「第30回世界病者の日」を前に、2月10日(木)、教皇庁人間開発省主催でインターネット会議が開催された。
「世界病者の日:意味・目的・挑戦」をテーマとしたこの会議に、教皇フランシスコはビデオを通しメッセージをおくられた。
この中で教皇は、教会、そして社会において、苦しむ人の傍に愛をもって寄り添うすべての人々に感謝を述べられた。
教皇は、病気の経験はわたしたちに自分の脆さを感じさせると共に、他者を必要とさせ、人生の新たな意味を異なる角度から考えさせるが、時にはその答えはすぐには見つからない、と述べた。
聖ヨハネ・パウロ2世が、自身の個人的な経験から、苦しみのキリスト教的な意味を追求する歩みに人々を招いたことを思い起こされた教皇は、その道は、自分の苦しみに押し潰されることなく、自分をより大きな愛へと開くものである、と話された。
そして、教皇は「もし人間がキリストの苦しみを分かち合う者になるとしたら、それはキリストがご自身の苦しみを人間に開かれたためであり、キリストご自身がその贖いの苦しみにおいて、すべての人の苦しみを分かち合われたからである。人間は信仰を通してキリストの贖いの苦しみを発見しつつ、同時に、信仰を通して、新しい内容と意味で豊かにされた自分の苦しみを再発見する」という聖ヨハネ・パウロ2世の言葉(1984年 使徒的書簡「サルヴィフィチ・ドローリス − 苦しみのキリスト教的意味 −」)を引用された。
教皇は、一人ひとりの病者の尊厳と脆さを決して忘れないように、また、体、精神、愛情、自由、意志、霊的生活といった、統合的な観点からのケアに配慮するようにと願われた。
体は救っても、人間性を失うようなことがあってはならない、と述べた教皇は、病者に尽くした聖人たちは、師イエスの教えに常に従い、体と魂の傷を癒し、肉体的・霊的な回復の両方のために祈り行動した、と語られた。
教皇は、今日広がる個人主義と他者に対する無関心が、消費主義的な幸福を追求する社会と行きすぎた自由経済の中で拡大され、その結果が医療分野における不平等、すなわち、高度医療を享受できる人々と、基本医療にさえアクセスが容易でない人々との格差を生んでいることを指摘。この「社会的ウイルス」に打ち勝つための薬は、皆が唯一の父なる神の子たちとして平等な存在であるという認識に基づく、兄弟愛の文化にほかならない、と話された。
教会は「人類の善きサマリア人」であるイエスに従い、常に苦しむ人々のために奉仕し、特に病者のために尽くしてきた、と述べた教皇は、最も貧しい病者たちのために献身する宣教師たちや、医療事業を起こした数多くの聖人たちを思いつつ、これからも人間の統合的な癒しのための召命と使命のカリスマを新たに、苦しむ人々に寄り添い続けるよう希望された。
教皇は、毎日病者に寄り添うすべての人々、家族と友人、医師、看護師、薬剤師、医療技術者・従事者、また司祭や修道者、ボランティアらに心からの感謝を述べられた。
そして、教皇は世界中の病者たち、特に孤独な人々、十分な医療へのアクセスができない人々を聖母の保護に託して祈り、すべての人に祝福をおくられた。