マルタ:教皇「今日の文明の中で遭難しないために人間性が必要」
教皇フランシスコは、4月3日午後、マルタ共和国訪問の最後の行事として、ハル・ファで、移民たちとお会いになった。
ハル・ファの移民センター「聖ヨハネ23世・平和のラボラトリー」は、フランシスコ会のディオニスス・ミントフ神父によって1971年に創始されたもので、現在はボランティアたちによって運営されている。
同センターでは、50人ほどの移民を受け入れている。その多くはリビア経由でヨーロッパに向かう、ソマリア、エリトリア、スーダンなどからの人々である。センターでは移民たちに人権教育の機会や医療サービス等を提供している。
移民センターに到着した教皇は、創立者のミントフ神父ら、関係者に迎えられ、施設の野外劇場でおよそ200名の移民との出会いを持たれた。
この集いでは移民の代表らが、内戦や暴力、貧困、遭難の恐怖、厳しい現実、未来への希望などを語った。
教皇は移民たちへの挨拶で、「使徒言行録」に記される、聖パウロの遭難とマルタ島で受けたもてなしの体験は、近年、地中海で無数の大人や子どもたちが体験しているものであり、残念ながらその多くは悲劇的なものである、と話された。
一方で、教皇は、海だけではないもう一つの遭難、「文明の遭難」を指摘。わたしたちの船が今日の文明の中で沈まないためには、人を単なる数字として扱わず、一人ひとりの顔やストーリーを大切にする「人間性」が必要、と語られた。
教皇は、これらの移民たちのストーリーに、戦争のために祖国を追われた多くのウクライナの人々の姿を重ねると共に、安全な場所を求めて住み慣れた土地を後にせざるを得なかったアジア、アフリカ、アメリカ大陸の移民たちにもご自身の祈りと思いを向けられた。
この集いで、教皇は移民たちにご自身の夢を託された。「人間性と兄弟愛に満ちた受け入れを体験した後、皆さん自身が、受け入れと兄弟愛を第一線で証しし、推進する人になって欲しい」と教皇は望み、「今日の世界は、移民たちが尊厳ある兄弟的な生活のための、基本的な人間の価値の証し人となることを必要としている」と強調された。
教皇は、この後、同センターで援助を受けている何人かの移民とお会いになり、これらの人々に耳を傾けられた。
こうして、2日間にわたるマルタ共和国の司牧訪問を終えた教皇は、送別式が行われる空港へと向かわれた。