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マルタ訪問:教皇「戦争の闇の中で、平和の夢を消さないように」

教皇フランシスコは、訪問先のマルタ共和国で、同国の各界代表に挨拶をおくられた。

 教皇フランシスコは、4月2日、マルタの首都バレッタで、同国の各界代表と会見された。

 マルタ到着後、大統領官邸にジョージ・ヴェッラ大統領を表敬訪問し、同大統領、およびロベルト・アベラ首相とそれぞれ会談された教皇は、続いて官邸の広間で、マルタの各界を代表する人々と、同国駐在外交団に挨拶をおくられた。

 この会見の終了後、教皇はヴェッラ大統領に伴われ、官邸のバルコニーに立ち、歓迎のために官邸前広場に集った大勢の市民らに祝福をおくられた。

 教皇は各界代表への言葉で、マルタが「地中海の中心」と定義されるのは、その位置のみならず、世紀にわたりこの地で交差してきた歴史や文化が作り出す活気と文化によるものである、と話された。

 マルタの社会や政治を特徴づけてきた、様々な世界からの風(影響)を、教皇は古地図に描かれる羅針図(コンパスローズ)をイメージしつつ語られた。

 北から吹く風、それはヨーロッパから来るものである、と教皇は述べ、特に、平和を守ることにおいて一致した大きな家族の家としての欧州連合の存在を示された。教皇は、ここでは、正義や社会平等の価値の推進に努力し、環境保護において最前線にある、と話された。

 この北の風は、時に西方の風と共に吹く、と教皇は語り、そこからは自由と民主主義の大きな価値を得る一方で、進歩への熱望によって自らのルーツを切り離す危険に注意しなくてはならない、と述べた。そして、教皇は、健全な発展のためには、記憶を守り、世代間の調和を醸し、画一化やイデオロギー的植民地主義に飲み込まれず、すべての人の尊厳といのちを尊重する必要がある、と話した。

 次に南方に目を向けた教皇は、そこから希望を求めてやって来る多くの兄弟姉妹の存在に言及。福音の精神の下にこれらの人々を受け入れるマルタ政府と国民に感謝を表された。地中海は再び連帯の舞台となるために、ヨーロッパの共同責任を必要としている、と教皇は指摘。地中海を文明の墓場にしてはならない、と訴えられた。

 同時に教皇は、戦争によって傷ついたウクライナからの避難民に思いを向け、各国の広い受け入れをアピールされた。

 最後に、教皇は東方を見つめた。陽がのぼる東からは、暗い戦争の風が吹いて来る、と述べた教皇は、他国の侵略や、残酷な市街戦、核兵器による威嚇は、遠い過去のものとわたしたちは考えていた、と語った。教皇は、戦争の冷たい風は、ただ死と破壊と憎しみをもたらすだけである、と強調。時代遅れの国粋主義的な関心に閉じこもった権力者が紛争を起こしている間に、普通の人々は未来を築く必要を感じている、と話した。

 今、戦争の闇が人類の上に降りて来た、と述べた教皇は、平和の夢を消さないようにしよう、と呼びかけられた。

 レバノン、シリア、イエメンなど、様々な問題や暴力に引き裂かれた中東の国々にも思いをはせた教皇は、マルタの共存と調和の力をこれらの国々も必要としている、と語った。

 教皇は、マルタが神の助けの下に、地中海の心臓として、希望と、いのちへのいたわり、他者の受け入れ、平和への熱望を、鼓動として響かせて欲しい、と願われた。

02 4月 2022, 16:36