マルタ訪問:教皇、ゴゾ島のタ・ピヌ巡礼聖堂で祈り
教皇フランシスコは、4月2日、マルタ共和国・ゴゾ島の巡礼地、タ・ピヌで、祈りの集いを持たれた。
マルタ訪問の初日午後、教皇は首都バレッタのあるマルタ島から、同国で二番目に大きい島、ゴゾ島に船で向かわれた。
ゴゾ島の北西部に、マルタの巡礼地タ・ピヌがある。タ・ピヌ巡礼聖堂の起源は少なくとも16世紀にさかのぼる。この時代、すでに聖母に捧げた小さな礼拝堂が建っていたが、完全に荒廃していたために、1575年、マルタを視察に訪れた教皇特使に取り壊しを命じられた。しかし、その作業が始まったとたんに作業員が腕を負傷した。これにしるしを見た人々は取り壊しを中止した。
後に、礼拝堂は小さな教会として修復・再建された。1883年に一人の農婦が「アヴェ・マリアを3回唱えてください」との聖母の声を聞いて以来、病者の快癒など特別な出来事が続き、さらに、1887年、ゴゾ島は奇跡的にコレラ感染を逃れたことから、タ・ピヌには次第にマルタ全土から信者が訪れるようになった。1931年、同地に新しい巡礼聖堂が献堂された。
1990年、教皇聖ヨハネ・パウロ2世はタ・ピヌの巡礼聖堂を訪問している。教皇フランシスコが訪問したこの日、4月2日は、聖ヨハネ・パウロ2世の命日でもある。
夕方、同巡礼聖堂に到着した教皇は、およそ3千人の信者たちに迎えられた。
教皇は、聖堂内の礼拝堂に掲げられた聖母画に、金の薔薇を捧げられた。そして、信者たちと共に、聖母が願ったように「アヴェ・マリア」の祈りを3回唱えられた。
次いで、教皇は聖堂前の広場で、マルタの信者の代表者たちが語る信仰の体験に耳を傾けられた。
教皇は集いの説教で、イエスの十字架上の受難の時、それは終わりではなく、新しいいのちの始まりをしるすものであった、と述べ、十字架上でわたしたちに両腕を開き、ご自身の死を通してわたしたちを永遠のいのちの喜びへと導く、キリストのいつくしみの愛を観想するよう招かれた。
タ・ピヌのかつての小さな教会が、今や多くの巡礼者が訪れるマルタ共和国の国立巡礼聖堂となったその歴史を教皇は思い起こし、ここでは人々は聖母に悲しみや喜びを託し、皆が受け入れてもらうことの喜びを感じることができる、と話された。
失われたかのように思われたが、今、信仰と希望の再生の地となったこの場所で、わたしたちもイエスの時、救いの時への招きを受け入れ、信仰と教会の宣教を新たにしよう、と教皇は呼びかけられた。
教皇は、霊的・司牧的豊かさに恵まれたマルタの教会の貴重な歴史に触れる一方で、教会生活を単なる過去の遺産として生きず、大きな未来の構築に向かうものとするよう願われた。
十字架の下でイエスが、弟子ヨハネを御母に、御母をヨハネに託されたことに、教皇は教会の皆が唯一の家族として、互いに受け入れ合い、愛し合うことの大切さを指摘された。
互いの受け入れは、キリストの名において、永遠の挑戦である、と述べた教皇は、地中海の十字路に位置し、使徒言行録に記された素晴らしい人間性を持つマルタの人々が、これからも貧しさや暴力に苦しむ人々、困難にある人々を受け入れ続けることができるよう祈られた。