「自然に優しい、平和の経済、いのちの経済を」教皇、アッシジ訪問で
教皇フランシスコは、9月24日(土)、イタリア中部アッシジで開催されたミーティング「Economy of Francesco」の最終日に参加、新しい経済のあり方を目指す若者たちに助言と励ましを与えられた。
経済をテーマにしたこのミーティングは、教皇フランシスコが2019年、世界各国の若いエコノミストや起業家、経済を専攻する学生、社会や共同体のために独自の経済活動を試みる若者たちを、環境、持続性、貧困問題、正義、平和などの広い観点を持った包括的な経済の考察へと招いたことを起点に始まった。
2020年3月、アッシジで予定された最初のミーティングは、パンデミックの影響のため、同年11月に延期してオンライン形式で行われた。
2年後、第2回目となるこのミーティングは、アッシジの会場に世界のおよそ100ヵ国の若者たちの直接参加を得て開催された。
この朝、アッシジのミーティング会場「テアトロ・リリック」に到着した教皇は、さっそく参加者らとの交流に入られた。
舞台では、イザヤ書の「見張りの者よ、今は夜の何どきか」「夜明けは近づいている、しかし、まだ夜なのだ」(参照 イザヤ12,11-12)という言葉を表現した「夜から夜明けへ」をテーマにしたパフォーマンスが行われ、続いて、アフリカ、南米、アジア、ヨーロッパ出身の若者たちが、それぞれを取り巻く環境、得た経験、これからの目標や夢を語った。
教皇は参加者への言葉で、「今日、環境危機、パンデミック、ウクライナや各地における戦争など、若い皆さんが生きるこの時代は決して容易ではない。われわれの世代は皆さんに豊かな遺産を残したが、地球を保護し、平和を保ち続けることはできなかった」と話した。
「皆さんは『共通の家』、その『崩れかけた家』を築き直す人となるよう呼ばれている」と教皇は述べ、「アッシジの聖フランシスコからインスピレーションを得た新しい経済は、今日、自然に優しい、平和の経済、『殺す経済』ではない『いのちの経済』となるべき」と語られた。
そして、教皇はその新たな経済に必要とされる側面として、環境との調和、搾取などによって破壊されたものを元どおりにするという普遍的倫理、そして多面的な持続性を挙げられた。
教皇は、「貧しい人の叫びと大地の叫びは、同じ叫びである」と述べ、環境問題への解決は、人々の貧しさや不平等を減らし、苦しむ人々に配慮するものでもあるべき、と話した。
また、教皇は今日の人間関係の貧しさを指摘。特に家庭の危機によって、人々はいのちを迎え入れ、守ることに困難をきたし、消費主義が人々の孤独や心の空虚を満たそうとしているが、それは「幸福の飢餓」を招くだけである、と説いた。
さらに、教皇は、社会や経済における精神性の重要さを強調。すべての人間は生きるための意味を求めているが、それは経済生活にも同様のこと、と述べ、これまで宗教や伝統によって育まれてきた社会の「精神的な資本」を現代世界は猛烈なスピードで消耗させ、若い人たちは今、意味の欠如に苦しんでいる、と語った。
教皇は、アッシジの聖フランシスコの清貧、貧しい人々への愛に触れながら、貧しい人々を中心に据え、貧しく弱い立場の人たちへの尊重と愛といたわりのある経済を目指すよう、若者たちを励まされた。
このような考察を踏まえながら、教皇は新しい経済を構想する若者たちに「貧しい人々の視点で世界を見る」、「労働と労働者の大切さを忘れない」、「考えや希望を具体的な形にする」の3つの点を助言された。
そして、教皇は「善」と「いのち」を望む若者たちの歩みを支えてください、と神に祈られた。
ミーティングの最後に、若者たちはこれからの目標リストを教皇に示し、教皇は若者たちの約束が記された紙にサインされた。