エディス・ブリュックさんの本に教皇の序文
教皇フランシスコは、ナチス・ドイツによるホロコーストの生存者である、作家・詩人、エディス・ブリュックさんの本に序文を寄せられた。
ブリュックさんは、1932年ハンガリーに生まれ、1954年よりローマ在住。
ハンガリーのユダヤ系の家庭に生まれたブリュックさんは、1944年、アウシュビッツ強制収容所に連行された後、数カ所の収容所に移送された。1945年4月、ベルゲン・ベルゼン強制収容所でようやく姉と共に解放されたが、その間に、両親と一人の兄弟、ほとんどの親族の命が奪われていた。ブリュックさんは、戦後、ショアの証人として、著作・演劇・映画などの活動に携わってきた。
教皇とブリュックさんの交流は、昨年1月27日の「ホロコーストの犠牲者を想起する国際デー」の前日、オッセルバトーレ・ロマーノ誌に掲載されたブリュックさんのインタビューを読んだ教皇が、その翌月20日、ローマ市内のブリュックさんの自宅を私的に訪問したことに始まった。
それから一年後、今年の「ホロコーストの犠牲者を想起する国際デー」には、ブリュックさんがバチカンのサンタ・マルタ館を訪れ、教皇と再会した。
ブリュックさんはこうした教皇との出会いを回想すると共に、そこから得た思索を『Sono Francesco』(ソーノ・フランチェスコ ※わたしはフランシスコです、の意)という本にまとめた。
そして、ブリュックさんの同著に、教皇は自ら序文を添えられた。
その中で教皇は、ブリュックさんのインタビューを読んだ時、この女性の静かな、輝く力、自らの人生を再び見出し、人類の歴史の最も暗い深淵の中で見たわずかな光を文学作品の中で伝えている、その力に胸を打たれた、と語っている。
教皇は、ご自身とブリュックさん間の交流を思い起こしながら、人間とは簡単に折れ、堕落する脆い存在であるが、しばしば、ブリュックさんのように、想像を絶する資質と力を備え、あらゆる敵意を超えて、人間的であり続けることができる人に出会うことがある、と記している。