教皇フランシスコ ハンガリーからの帰国便機内で記者団と対話 2023年4月30日 教皇フランシスコ ハンガリーからの帰国便機内で記者団と対話 2023年4月30日  (VATICAN MEDIA Divisione Foto)

ハンガリー訪問:教皇、帰国便内で記者団と対話

ハンガリー司牧訪問を終え、教皇フランシスコは帰国便の機内で記者団と対話された。

 教皇フランシスコは、4月30日、ハンガリー司牧訪問終了後の帰国便機内で、随行記者団と対話された。

 この会見では、ハンガリー訪問の印象やウクライナをはじめとするヨーロッパの平和問題などが主なテーマとなった。

 「教皇ご自身これまでの人生の中でハンガリーの人々と交流があったと聞いているが、今回の訪問でハンガリー人に対する印象は変わったか」という問いに、教皇は、1960年代にチリで勉強していた時、ハンガリーを追われた多くのイエズス会員がチリにいたこと、また、ブエノスアイレス郊外で学校を運営していたメリー・ウォード(尊者1585-1645)の会(ロレット修道女会)のハンガリー人の修道女たちと親しく、同共同体を月2回訪問し、非専属の指導司祭的役割を果たしていたこと、またブエノスアイレスのハンガリー人の信徒たちの組織をよく知っていたことなどを回想。教皇は、こうした交流の中で「難民となって家に帰ることができない人々の苦しみに胸を打たれた」と語った。

 前回(2021年、国際聖体大会のための訪問)と今回の2回の訪問を通し、教皇は「ハンガリー人に対する印象は変わることなく、むしろより豊かになった」と述べた。教皇がかつて知り合ったハンガリー人たちは、皆すぐれた文化的素養を持ち、社会的階層に関係なく、一般の人も厚みのある文化的基盤を持っていたが、今回の訪問で、それは今も変わっていないのを見た、と話した。

 「教皇は、わたしたちのエゴイズムの扉を貧しい人・移民たちに開くように、と呼びかけているが、ハンガリーのオルバーン首相との会談で、彼が閉鎖したバルカン・ルート(バルカン半島を経由してヨーロッパ諸国を目指す移民のルート)の再開を要請したか」と問われた教皇は、「平和は伝達手段を閉じずに、開くことで常に成り立つ。わたしは皆に関係を開くように、友好のための経路を開いておくようにと呼びかけている。わたしはオルバーン首相にもそのようにしたし、誰に対してもそうしている」と答えた。

 教皇は移民問題について、「ヨーロッパはこの問題を管理すべきだ。移民たちが主に上陸する地中海の5カ国、キプロス、ギリシャ、マルタ、イタリア、スペインが最も苦しんでいるからだ。ヨーロッパが移民の平等な受け入れ責任を負わないのならば、それはこれらの国々だけの問題になってしまう。ヨーロッパはこの問題を前に、『欧州連合』であることを見せなければならない」と語った。

 ハンガリー滞在中、教皇がロシア正教会の前渉外局長で現在はブダペストおよびハンガリー府主教のイラリオンと会見したことについて、「イラリオン府主教は、オルバーン首相同様、ウクライナのための平和プロセス推進におけるモスクワとの交渉ルートとなり得るか」との質問が上がった。

 教皇は「イラリオン府主教は、わたしが大変尊敬する人で、いつも良い関係を持っていた。(教皇のハンガリー滞在中)彼はわたしを訪ね、ミサと、空港にも来てくださった。イラリオン府主教は知的で話し合える人であり、関係を保つべき人である」「わたしたちは誰にも手を差し伸べる必要があると同時に、他者から差し出された手を受け入れる必要もある」と述べた。

 教皇は、キリル総主教とは、戦争開始後、ただ一度40分間ビデオで話したが、その後はイラリオン府主教の後継(渉外局長)のアンソニー府主教をキリル総主教との交渉の窓口としている、と語った。エルサレムで昨年予定されていたキリル総主教との会見は戦争で取りやめとなったが、いつか行う必要がある、とも話した。

 また、教皇は、駐バチカン大使を7年間務め、近々退任するロシア大使への敬意と良好な関係に言及し、ロシアとの関係は主にこの大使を通したものである、と語った。

 会見では、「ウクライナの首相が、ロシアに強制的に連れ去られた子どもたちの帰還のために、あなたの助けを願ったが、これを助けられると思うか」との質問もあった。

 これに対し、教皇は「そう思う。なぜなら、教皇庁は、捕虜交換をめぐるいくつかの状況において仲介を果たし、大使館を通じて、それは成功している。このケースでもそれはうまくいくかもしれない。重要なのは、少なくとも教皇庁はそれを行う用意があるということだ。それは正しいことであり、わたしたちはそれを助けるべきだ。これは人道的問題だからだ。人間としてできることはすべてしなければならない」と答えた。

01 5月 2023, 14:05