降誕祭深夜ミサ:教皇「小さき者の道を選び、この世に入られた神」を観想
バチカンで、2023年度の降誕祭の深夜ミサが、教皇フランシスコによってとり行われた。
降誕祭前日のローマは、曇りがちで比較的温かい一日となった。
深夜ミサが行われた聖ペトロ大聖堂は、地元ローマをはじめ、世界各地から訪れた参列者たちでいっぱいとなった。
教皇は説教を通し、人々をベツレヘムにおける主の降誕の場面にいざないつつ、今日の聖地の情勢を思い、平和の君イエスへの祈りを新たにされた。
説教の中で教皇は、福音書にはイエスの降誕が皇帝アウグストゥスの勅令による「全領土の住民の登録」(参照 ルカ2,1)という出来事を背景に記されていることに注目。
福音書は、この住民登録について軽く触れるだけで済ませず、あえてそれを詳しく記述することで、皇帝が世界の住民を数えている間に、神が目立たずこの世に入って来られたという、その対比を浮かび上がらせている、と話された。
この世の王が歴史に名を馳せようとしている時、歴史の王は小さき者の道を選んだ、と教皇は述べ、権力者たちが誰も幼子イエスの存在に気づかなかったのに対し、それに気づいたのは社会の片隅に生きる数人の羊飼いたちだけだった、と語った。
「今夜、わたしたちの心はベツレヘムにある。そこでは平和の君は戦争の論理によって未だ拒絶され、今日もまた武器の轟音が、御子にこの世で宿を見つけることを妨げている」(参照 ルカ2,7)、と教皇は戦争が続く聖地の現状を見つめられた。
「遠く離れた、厳格で力ある神、ご自分の民を優先する神の世俗的なイメージがわたしたちの中に根付いているが、そうではない。全地の住民登録が行われる中、主はすべての人のためにお生まれになった」。
「神がわれわれ人間の状態の中に深く入り込まれたのは、わたしたちを何よりも大切に思うほどに愛されるからである。住民登録が行われている間に歴史を変えた神にとって、あなたは数字で表される存在ではない、一つの顔を持った存在である。あなたの名前は神の御心に刻まれている」。
「キリストは数字ではなく、顔を見つめられる。しかし、多くの物事に囲まれ、常に忙しく、無関心な世界のこの狂った競争の中で、誰が神を見つめるだろうか。人々が住民登録に夢中になって、行ったり来たりし、宿をいっぱいにしていた時、イエスの近くにいたのは、マリアとヨセフ 、羊飼いらと東方の博士たちの数人であった。彼らから学び、イエスに心を向け、眼差しを注ごう。彼らは語るのではなく、礼拝していた」。
教皇はこのように話された。
「この夜、愛が歴史を変える。主よ、この世の力とはあまりにも違う、あなたの愛の力を信じます」と述べた教皇は、「マリアとヨセフ、羊飼いや東方三博士たちと、あなたを囲み、拝みます。あなたによって、あなたと似たものとなり、あなたの御顔の美しさを世に証しできますように」と祈られた。