ジュセッペ・ディアナ神父殺害から30年、教皇の書簡

　教皇フランシスコは、イタリア南部アヴェルサ教区のアンジェロ・スピニッロ司教に宛てた書簡を通し、30年前、マフィアに殺害されたジュセッペ・ディアナ神父を偲んだ。

　ジュセッペ・ディアナ神父（1958-1994）は、イタリア・カンパニア州カセルタ県のカサル・ディ・プリンチペの生まれで、1982年、司祭に叙階された。アヴェルサ教区の司祭として、ボーイスカウトの顧問等を経て、1989年から故郷カサル・ディ・プリンチペのサン・ニコラ・ディ・バーリ小教区の主任司祭を務めると共に、地元の高校で文学・宗教などの科目を教えた。

　「カモッラ」と呼ばれるマフィアの影響を受けた社会において、ディアナ神父は福音の精神のもとに人々を導き、支えた。そして、1991年の降誕祭には、「わたしの人々への愛のために」と題された書簡を発表し、犯罪組織のシステムを前にキリスト者のとるべき態度と責任を示した。

　ディアナ神父は、1994年3月19日、自身の洗礼名の記念日でもある聖ヨセフの祭日の朝、ミサの準備をしていた香部屋でカモッラの一員によりピストルで殺害された。

　教皇フランシスコは、書簡の中で30年前の悲劇的な出来事を振り返ると同時に、人々の生活の「荒れ野」に分け入り、自らの命を犠牲にするまでに人々を守り、民に尽くした、神の「忠実な良い僕」（マタイ25,21、25,23）であったディアナ神父を思い起こした。

　教皇はアヴェルサ教区の人々、中でも「ペッペ神父」と呼ばれ親しまれていたディアナ神父を記憶するカサル・ディ・プリンチペのサン・ニコラ・ディ・バーリ教会の信者たちに、ディアナ神父と同じ希望をもって共に歩み、キリスト教的預言を実現しながら、悪の支配から自由な世界を構築するよう呼びかけた。

　また、ディアナ神父が開いた道を日常的な努力をもってたどり、正義の種と地元の人間的・社会的発展の夢を忍耐のうちに育て続けるすべての人々を勇気づけられた。

　正義を否定し、人間の尊厳を無にする非道な暴力と横暴を前に、キリスト者は福音を告げ、キリストと共に、兄弟愛と交わりによって豊かにされた新しい人類のしるしとしての召命を生きるように呼ばれていると教皇は述べた。

　そして、「キリストにおいて洗礼を受けた信者、また司牧者として、神はわたしたちに預言者であるようにと望まれる。預言者は見張りとして、不正義を見、それを告発し、神が望まれる本来のご計画を思い出させなければならない」（「わたしの人々への愛のために」1991年）と言ったディアナ神父の言葉を改めて示された。

　教皇は、師イエスの勇気ある弟子、ディアナ神父の死から30年が経った今、人々が御言葉を受け入れ、神の真理において信仰と希望を強め、悪の闇から清められた調和と兄弟愛あふれる未来を築く目標を保ち続けることができるようにと祈られた。