教皇庁教理省、人権をテーマとする文書発表
教皇庁教理省は、4月8日、人権をテーマとする文書「ディニタス・インフィニタ」を発表した。
1948年12月10日、国連総会で「世界人権宣言」が採択されて以来、昨年2023年12月、75周年を迎えた。
人権宣言75周年を記念する同文書は、この十数年の教皇の人権をめぐる教えを示すと共に、今日の人権に対する「いくつかの重大な侵害」を挙げている。
文書「ディニタス・インフィニタ」は、その冒頭で、「教会は啓示の光に照らし、確固たる姿勢で」「神に似姿に造られ、イエス・キリストにおいて贖われた人間の存在論的な尊厳を強調し、確認する」と述べている。
同時に、「教会はすべての人間の平等な尊厳を、人々の人生の状況や性質に関係なく、宣言する」とも記している。
同文書は、「人間の尊厳」に対し「個人の尊厳」という表現を好み、「個人だけが『考えることができる存在』であるかのように」捉えている人々の意見に代表される、ある種の曖昧さを明るみに出している。
また、同文書は「人間の尊厳の概念が、時に、新しい権利の独断的な増大を正当化するために、乱用的な方法で使われることがある」ことをも指摘している。
こうして、同文書は、「人権に対するいくつかの重大な侵害」を列挙する。
それらは、「命そのものと対立するすべてのもの、たとえば、あらゆる種類の殺人、ジェノサイド 、堕胎、安楽死、同様に計画的な自殺」などである。
また「人間の完全な状態を侵害するすべてのもの、たとえば、身体に障害を負わせる行為、心身に科された拷問、心理的な強要」などでもある。
さらには「人間の尊厳を侵害するあらゆるもの、たとえば、人間の尊厳にそぐわない生活条件、専断的な投獄、流刑、奴隷状態、売春、女性や若者に対する取引、労働者が自由で責任ある人間としてではなく、単なる儲けの道具として扱われる、恥ずべき労働条件」などである。
死刑制度もまた「あらゆる状況にも関わらず譲り渡すことのできない、すべての人の尊厳を侵す」ものとして挙げられている。
同文書は「貧困の悲劇」を「現代の世界で最も重大な不正義の一つ」とし、戦争を「人間の尊厳を否定する悲劇」と記している。この他、移民の労苦、人身取引、性的虐待、女性への差別を、人権に対する重大な侵害として示している。
また、堕胎を非難し、「生まれてくる命の保護は、あらゆる人権の保護と密接に結びついている」ことを思い出させている。また、代理母出産について、「それを通して、無限の尊厳を持つ子どもを単なる物にしてしまう」恐れを持つ、「女性と子の尊厳を著しく傷つける」方法であると述べている。
続けて、同文書は、いくつかの法令によって「尊厳ある死」と曖昧に定義された安楽死と、幇助を受けた自殺を、人権を侵害するものとして挙げている。
同文書は、同性愛の人々に対する「不当な差別の烙印と特にあらゆる形の攻撃と暴力」はあってはならないと述べている。ジェンダー理論に関しては、「すべての人を同じにするという主張のうちに違いを消し去るために、非常に危険なもの」としている。
「人権に対する重大な侵害」のリストは、「ソーシャル・メディアを介して広がる新しい形の暴力」に言及して締め括られている。
教理省文書「ディニタス・インフィニタ」は、最後に、「共通善とすべての法的制度のための取り組みの中心に、あらゆる状況を超えて、人間の尊厳の尊重を置くように」と呼びかけている。