AI利用の倫理めぐる広島での宗教指導者の会合に教皇のメッセージ
広島で7月9日、10日の両日開かれた人工知能(AI)利用の倫理問題をめぐる世界各地の宗教指導者らの会合に、教皇フランシスコはメッセージをおくられた。
「平和のための AI 倫理:ローマからの呼びかけにコミットする世界の宗教」 (AI Ethics for Peace: World Religions commit to the Rome Call)と題されたこのイベントは、教皇庁立生命アカデミー、世界宗教者平和会議・日本委員会、アブダビ平和フォーラム、イスラエル諸宗教関係首席ラビ委員会によって共催され、13 カ国から 150人以上の参加者を得て行われた。
「ローマからの呼びかけ」とは、教皇庁のイニシチアブにより、2020年2月28日、ローマにおいて開かれた会議「RenAIssance 人間中心の人工知能のために」の成果として、人間を尊重する人工知能の推進のための基本原則をまとめた文書「AI倫理のためのローマからの呼びかけ(Rome Call for AI Ethics)」を指す。この文書には、最初に、教皇庁立生命アカデミー、マイクロソフト、IBM、国連食糧農業機関、イタリア政府・技術革新・デジタル化省の代表が署名を行った。
このたび広島で行われた催しでは、会合2日目にあたる10日、日本やアジアの諸宗教の指導者らが新たに「AI 倫理のためのローマからの呼びかけ」に署名を加えた。
教皇フランシスコは、広島のイベントの参加者へのメッセージで、「人工知能」と「平和」を、「絶対的な重要性を持つ2つのテーマ」として結びつけられた。
教皇は、先月イタリア南部プーリアで開催された先進7カ国首脳会議で、「人工知能」をテーマに行ったスピーチを引用しつつ、機械は、新しい方法によって、アルゴリズム的な選択を生み出せるのだということを、常に頭に入れておくことが必要、と改めて注意を喚起。
機械がよく定義された基準、あるいは統計的な推論に基づき、いくつかの可能性の中から技術的な選択をするのに対し、人間は選ぶだけでなく、心を通して決断する力を持っている、と教皇は述べつつ、独立した選択ができるかのように見える機械の驚くべき力を前に、決定は常に人間の側に残るべきことを明確にしなくてはならないと強調された。
もし人々から自分と自身の人生についての決定力を取り上げ、機械による選択に頼るなら、人類の未来に希望はないと警告する教皇は、AIのプログラムの選択プロセス上に、人間による重要なコントロールの余地を保証し、それを保護する必要を呼びかけられた。
教皇はこの催しを称賛する中で、機械使用のこの新たな時代に、人間の尊厳を守るため、わたしたちが一致して積極的な取り組みを求めていることを、世界に示して欲しいと願われた。
また、教皇は、世界を揺るがす今日の紛争間で、戦争への憎しみに加えて、このテクノロジーについて耳にすることが多くなっていることからも、参加者らが人工知能と平和について話し合うために広島に集っているという事実に、非常に象徴的な意味を見出された。
そして、教皇は、武力紛争の悲劇において、いわゆる「自律型致死兵器」のような装置の開発と使用の再考が急務であり、その使用禁止のためには、より幅広く意味ある人的コントロールを取り入れる必要があること、そして、いかなる機械も人間の命を奪う選択は決してできないことを、皆が兄弟として一致して、世界に思い出させることが重要である、と記された。