教皇「各国の指導者がベルギーとその歴史から学ぶように」
教皇フランシスコは、9月27日、訪問中のベルギーで、同国の各界を代表する人々とお会いになった。
教皇はこの朝、ブリュッセル北部のラーケン城を訪れ、フィリップ・ベルギー国王への表敬を行われた。
この後、教皇は、アレクサンダー・ドゥ=クロー首相と会談。
次いで、ラーケン城内の大ギャラリーに集った、ベルギーの政治・経済・文化・宗教、市民社会等を代表する人々、約300名を前に公式の挨拶をおくられた。
教皇はこの中で、ベルギーを西欧的であると同時に、巨大な組織の心臓部のような中心性を感じさせる国、と述べた。
ベルギーは広大な国ではないが、この国を偉大にしているのは、第二次大戦終結後、ヨーロッパの疲弊しきった人々が、平和、協調、統合の歩みを真剣に始めようとした時、ヨーロッパの主要機関の本拠地としてベルギーに注目した、その特異な歴史のためである、と教皇は話された。
ベルギーは、ゲルマン世界とラテン世界の断層上にあり、紛争の根元にある国家主義的対立を最も体現していたフランスとドイツに隣接していたために、ヨーロッパが物理的、倫理的、精神的な復興に再出発するための理想的な場所、ヨーロッパの要約とも言える場所として見られることになった、と振り返った。
ベルギーは、ヨーロッパ大陸とイギリス諸島の間に、ゲルマン語圏とフランス語圏の間に、ヨーロッパの南と北の間に架けられた橋として、様々な言語、精神性、信念を持つ人々が、他者と出会い、関係を築くための手段として、言葉や、対話、共有を選択する場である、と教皇は語られた。
このように理解すればするほど、小さなベルギーがいかに大きな存在であるかがよくわかるだろう、と述べた教皇は、ヨーロッパは民族間の平和と兄弟愛の道を歩み続けるためにベルギーを必要としている、と説かれた。
また、教皇は、国境や条約をもはや尊重せず、武力に走る時、パンドラの箱が開き、あらゆる風が激しく吹き始め、家を揺るがし壊す恐れがあることを、ベルギーは他の人々に思い出させる役割を負っている、とも話された。
和解と平和は、一気に獲得されるものではなく、粘り強さと忍耐をもって育まれるべき、絶え間ない課題、使命である、と教皇は指摘。人間は、過去を記憶し、それから学ぶことをやめると、前の世代が払った恐ろしい苦しみと犠牲を忘れ、ようやく立ち直ったにもかかわらず、再び転落してしまう、驚くべき能力を持っており、こうした意味で、ベルギーの存在はヨーロッパ大陸の記憶にとってまたとなく貴重である、と語られた。
残念ながら歴史の教訓はしばしば傾聴されることがない、と述べた教皇は、ベルギーは、ヨーロッパが自らの歩みを取り戻し、本来の姿を再発見し、生命と希望に向けて開き、人口減少の冬と戦争の地獄を打ち破り、未来に再び賭けるように呼びかけている、と話された。
教皇は、各国の指導者たちが、ベルギーとその歴史を見つめ、そこから学ぶことで、自国民を終わりなき災害と死別から免れさせることができるように祈りたい、述べられた。
この席で教皇は、献身的に活動するベルギーの教会に暗い影を落としている未成年者への虐待問題にも言及。
教会はこの恥ずべき問題に対しゆるしを乞わなければならない、と教皇は述べ、この痛ましい悲劇的な出来事を前に、傷ついた人々の声に耳を傾け、寄り添い、世界中のいたるところで防止のプログラムを実施しつつ、断固とした態度で取り組む教会の姿勢を示された。