「小さな者の歩みをつまずかせてはならない」教皇、ベルギーでミサ

教皇フランシスコは、ベルギー訪問最終日、ブリュッセルの競技場でミサを捧げられた。このミサ中、神のしもめ・アナ・デ・ヘスス修道女の列福式がとり行われた。

 9月26日(木)夜から始まった教皇フランシスコのベルギー訪問は、29日(日)最終日を迎えた。

 教皇は、この訪問における最後の公式行事として、ボードゥアン国王競技場でミサを捧げられた。

 この教皇ミサのために、競技場にはおよそ4万人の信者が詰めかけた。

 ミサの前半、神のしもめ・アナ・デ・ヘスス修道女の列福式がとり行われた。

 跣足カルメル修道会の修道女、アナ・デ・ヘスス(イエスのアンナ)は、1545年、スペインのメディナ・デル・カンポに生まれ、1621年、ベルギーのブリュッセルで帰天した。アヴィラの聖テレジアと十字架の聖ヨハネのそばで、カルメル会の改革のために働き、スペインや他の国々において、多くの修道院の創立に参与した。スペイン、フランスを経て、フランドル地方に赴き、1607年には、ブリュッセル、ルーヴェン(ルーヴァン)に修道院を創立している。

 教皇はミサの説教で、この日の福音朗読(マルコ9,38-43、45、47-48)中の、「わたしを信じるこれらの小さな者の一人をつまずかせる者は、大きな石臼を首に懸けられて、海に投げ込まれてしまう方がはるかによい」(同9,42)というイエスの言葉を取り上げられた。

 そして、「小さな者たち」の歩みをつまずかせ、妨げないように弟子たちに訓戒する、イエスのこの強く厳しい言葉を心に留めるように招かれた。

 エゴイズムは、愛を妨げるあらゆるものと同じように、小さな者たちを押しつぶし、人間の尊厳を侮辱し、貧しい人の叫びを押し殺してしまうがゆえに、つまずきの元である、と教皇は述べた。

 たとえば、個人や共同体の生活の基盤に、エゴイズムと市場の論理だけを据えるならばどうなるだろうか、と教皇は問い、そうなれば、困難に陥った人への配慮も、過ちを犯した人への憐れみも、苦しむ人への同情もない世界ができあがることだろうと話された。

 教皇は、このベルギー訪問で、教会の聖職者による虐待の被害者たちの苦しみに耳を傾けたことに触れながら、小さな子どもたちにとって、彼らの世話を託された人々によってつまずき、傷つけられ、虐待されることが何をもたらすのか、被害者は当然のこと、家族や地域社会にそれが与える苦しみと無力感がどんなものであるかを考えて欲しい、と訴えた。

 「教会にはすべての人に場所があるが、虐待と虐待の隠蔽にはその場所はない。虐待を隠蔽してはならない。悪を隠してはならない」と、教皇は司教をはじめ、教会全体に呼びかけられた。

 社会的、経済的な面も含め、未来の種を蒔きたいならば、いつくしみの福音をわたしたちの選択の基礎に改めて据える必要がある、と教皇は述べ、愛がなければ、何も残らず、すべては消え、崩れ去り、空虚で無意味な人生に囚われるだけである、と説かれた。

 こうした中、教皇はこの日列福された、アナ・デ・ヘスス修道女に言及。アヴィラの聖テレジアという「霊性の巨人」の足跡に従い、キリスト教共同体の内外につまずきとなる多くの出来事が見られた時代に、仲間の修道女たちと共に、貧しい生活と、祈り、仕事、愛徳のわざを通して多くの人々に信仰を再びもたらし、ここブリュッセルに創立した修道院を「霊的磁石」と人々に言わしめた、その生涯と信仰の証しを振り返った。

 あえて書き物を残さず、自らが学んだことの実践に尽くしたアナ・デ・ヘスス修道女の生き方が、今大きな困難にある教会の再建の助けとなるようにと教皇は祈られた。

29 9月 2024, 14:58