コルシカ島:教皇、民間信心が持つ福音宣教の力を指摘

教皇フランシスコは、フランスのコルシカ島を訪問、アジャクシオで開催された「地中海地域の民間信心」をめぐる会議最終日の講話を行われた。

 フランスのコルシカ島を、12月15日(日)、訪問された教皇フランシスコは、アジャクシオで開かれた「地中海地域の民間信心」をめぐる会議の最終セッションを主宰された。

 この会議は、アジャクシオ教区が12月14日・15日の両日にわたり主催したもので、フランスはもとより、イタリア、スペインなど地中海諸国から、研究者や、司教をはじめとする教会関係者ら、およそ400人が参加した。

 アジャクシオ到着後、教皇は空港から車で港湾地帯にある会議場、パレ・デ・コングレへと向かわれた。コルシカ島へのローマ教皇の訪問は初めてとあり、その途中、教皇はいたる所で市民の熱い歓迎を受けられた。

 教皇は会議を締めくくる講話で、多くの文明の揺籃の地となった地中海地域の歴史と特性に言及。

 三つの大陸を結ぶ大きな「湖」として歴史に刻まれたこの地域が、特にギリシャ−ローマ、ユダヤ教−キリスト教の文明において目覚ましい発展を遂げたこと、古代ギリシャ−ラテン文学において神話や伝説を生み、哲学思想や芸術を育てる土壌となり、航海技術、コミュニケーション、法制、公共システムなどの発達と共に優れた文化を築いて行った過程を振り返った。

 地中海からオリエントにかけた地域は、イスラエルの神に結ばれた非常に特殊な宗教体験の起源の地となり、人類にご自身を啓示される神の、民との絶え間ない対話は、神の御顔を決定的な形で知らしめた神の御子イエスの現存において頂点に達した、と教皇は話された。

 神の御子の受肉から2千年が経ち、その間、キリスト教信仰が人々の生活と政治制度そのものを形づくった時期もあったが、今日、特にヨーロッパ諸国において、神に対する問いかけは弱まり、神の現存と御言葉に対する無関心がますます見受けられるようになった、と教皇は今日の状況を直視。

 その一方で、こうした状況の性急な分析や、キリスト教文化と世俗文化を安易に対比させるイデオロギー的な傾向に注意を促された。

 むしろ、この二つの世界が相互に開き合うことに大きな重要性を認められる教皇は、信者が、強要することなく、世のパン種として、自らの信仰を落ち着いて生きる一方、信仰を持たない人や宗教的な実践から遠ざかった人も、真理や正義、人生の意味や共通善の追求から決して遠ざかったわけではないと指摘。このようなコンテキストの中にこそ、民間信心の素晴らしさと重要性を見出すべき、と述べられた。

 民間信心は、文化や歴史、民族的表現の中にシンボルや習慣、典礼を通し、キリスト教信仰の基礎である神の御子の受肉の神秘をわたしたちに伝えるが、それは同時に、信仰から遠ざかった人々にも、自身のルーツや愛着を呼び起こし、自分の生活や社会に役立つ価値や考え方をもたらすものであると教皇は話し、民間信心の福音宣教の力を低く見積らないことが大切、と説かれた。

 また、教皇は、民間信心がキリスト教信仰と民族的文化の価値を伝えながら、人々の心を一致させ、共同体を形づくり、社会全体に実りを、市民と行政間に絆をもたらし、貧しい人々への奉仕のために共に働かせる力があることにも触れられた。

 民間信心が根付いたコルシカは、宗教と世俗、教会と社会の対話のモデルであると称賛された教皇は、若者たちに社会と文化に積極的に関わりながら共通善に奉仕するよう、司牧者や信者たちには常に人々に寄り添い、苦しみに耳を傾け、希望をもたらすようにと、励ましを与えられた。

15 12月 2024, 14:22