2024年度降誕祭:教皇フランシスコによるクリスマス・メッセージ
2024年度の主の降誕の祭日を迎えた12月25日(水)、教皇フランシスコは、ローマと全世界に向けたメッセージと祝福「ウルビ・エト・オルビ」をおくられた。
降誕祭のローマはおだやかに晴れ渡り、前晩に聖ペトロ大聖堂の聖なる扉が開かれたバチカンには、聖年のクリスマスを祝おうと世界各国からの巡礼者が集った。
広場にはバチカンとイタリアの警察のブラスバンドの演奏が響き、イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州レドロから寄贈されたツリーや、フリウリ-ヴェネツィア・ジュリア州グラードの人々が製作した、アドリア海のラグーナ(潟)の漁師たちの生活を彷彿させる、周囲に水を張ったプレゼピオが巡礼者たちの目を楽しませていた。
教皇は正午に聖ペトロ大聖堂の中央バルコニーに姿を見せられ、クリスマスのメッセージを述べると共に、ローマと全世界に祝福をおくられた。
教皇フランシスコの2024年度のクリスマス・メッセージは次のとおり。
********
親愛なる姉妹の皆さん、親愛なる兄弟の皆さん
主の降誕のお喜びを申し上げます。
この夜、わたしたちに驚きと感動を与え続ける神秘が新たにされました。おとめマリアはイエスを生みました。神の御子は布にくるまれ、飼い葉桶の中に寝かされています。ベツレヘムの羊飼いたちが見たものはこうした光景でした。羊飼いたちは喜びに満たされました。天使たちは「栄光、神にあれ、平和、人にあれ」(参照 ルカ2,6-14)と歌っていました。
2000年前に起きたこの出来事は、聖霊の働きによって新たにされます。愛といのちの聖霊ご自身によってマリアは受胎し、その人間の体をもってイエスを生みました。そして、今日、この時代の苦悩の中で、永遠の救いの御言葉は再び真に受肉し、すべての人に、全世界に「あなたを愛している。あなたを赦そう。わたしに立ち帰りなさい。わたしの心の扉は開いている」と呼びかけています。
兄弟姉妹の皆さん、神の心の扉はいつも開いています。神に立ち返ろうではありませんか。わたしたちを愛し、赦されるその御心に帰りましょう。神に赦していただきましょう。神と和解させていただきましょう。
昨晩、ここ聖ペトロ大聖堂でわたしは聖年の聖なる扉を開きました。聖なる扉、それはすべての人に開かれた救いの扉、イエスを意味します。イエスはいつくしみ深い御父が世界の、歴史の真ん中に開けた扉です。それはわたしたちが神に立ち返るためのものです。わたしたちは皆、道を見失った羊として、羊飼いと、御父の家に戻るための門を必要としています。イエスは羊飼い、イエスは門です。
兄弟姉妹の皆さん、恐れてはいけません。扉は開いています。大きく開かれているのです。来てください。神と和解させていただきましょう。そうすることで、わたしたちは自分自身と和解し、われわれの間でも、われわれと敵対する人とも、和解することができるのです。そうです。神のいつくしみは何でも可能です。あらゆる結び目を解き、隔ての壁を打ち壊し、憎しみと復讐の精神を解きほどいてくれます。来てください。イエス」こそが平和の門です。
わたしたちはしばしば敷居の上で立ち止まります。それを乗り越える勇気がないのです。自分を問いただすからです。扉から入り、平和の君である幼子イエスの腕に自身を委ねるには、一歩を踏み出すための、争いや分裂を捨て去るための、努力が必要です。聖年の始まりであるこの降誕祭に、すべての人、すべての民族、国に呼びかけたいと思います。扉をくぐり、希望の巡礼者となり、武器を捨て、分裂を乗り越える勇気を持ってください。
苦しむウクライナで武器の音が止みますように。あるべき恒久の平和に到達するために、交渉と、対話と出会いの態度に、扉を開く勇気を持つことができますように。
中東で人々が武器を収めますように。ベツレヘムの飼い葉桶の幼子イエスを見つめながら、特に深刻な人道状況にあるガザをはじめ、イスラエルとパレスチナのキリスト教共同体を思います。戦闘をやめ、人質を解放し、飢えと戦争で疲弊した人々を助けることができますように。
わたしはレバノン、特に同国南部の、また現在大変複雑な状態に置かれたシリアの、キリスト教徒たちに寄り添いたいと思います。紛争に引き裂かれたすべての地域で、対話と平和の扉が開きますように。ここで、リビアの人々にも、国内の和解を促す解決を見つけられるように励ましたいと思います。
救い主の誕生が、感染症による危機に見舞われているコンゴ民主共和国の家族や子どもたちに、また同国東部や、ブルキナファソ、マリ、ニジェール、モザンビークの人々にも希望の時をもたらしますように。
主に武力紛争やテロリズムの傷によって引き起こされた人道危機は、気候変動の破壊的な影響によって深刻化し、人命の喪失と無数の避難民を生んでいます。
同様に、「アフリカの角」地帯の国々にも、平和と調和、兄弟愛の賜物を祈ります。いと高き方の御子が、スーダンの市民に対する人道支援へのアクセスを促し、停戦を目指す新たな協議を開始するための国際社会の努力を支えてくださいますように。
主の降誕の知らせが、ミャンマーの住民になぐさめをもたらしますように。ミャンマーでは、長引く武力衝突により、人々は苦しみ、家を離れ逃げざるを得ない状況に面しています。
ハイチ、ベネズエラ、コロンビア、ニカラグアをはじめ、アメリカ大陸諸国が、社会調和を推進するための解決を、真理と正義のもとに一刻も早く見つけることができるように、幼子イエスが政治家とすべての善意の人々に霊的な促しを与えてくださいますように。また、特にこの聖年において、人々が政治的対立を乗りこえ、共通善を築き、すべての人の尊厳を再発見できるように、働きかけてくださいますように。
聖年がすべての隔ての壁を、特に政治生活、実生活に影響を与えがちなイデオロギー的な壁を打ち壊すための機会となりますように。たとえば、キプロス島では、すでに50年にわたる分裂が人々と社会の基盤を傷つけています。キプロスのすべての共同体の権利と尊厳の尊重のうちに共通の解決を見出し、分裂に終止符を打つことができますように。
人となられた永遠の神の御言葉、イエスは開かれた扉です。わたしたちは人生の意味とすべてのいのちの神聖さを見出すために、人類家族の土台となる価値を再発見するために、その扉をくぐるようにと招かれています。イエスは戸口で待っておられます。最も弱い立場にある人々はもとより、わたしたち一人ひとりを待っておられます。
イエスは子どもたちを、戦争と飢えに苦しむすべての子どもたちを待っておられます。しばしば孤独で見捨てられた状態で暮らすお年寄りたちを待っておられます。家を失い、安全な場所を求めて故郷から逃げた人々、仕事を見つけられない人を、すべてに関わらず常に神の子である受刑者たちを、信仰によって迫害される人々を待っておられます。
この祭日、静かに誠実に善のために尽くす人々に、わたしたちの感謝が欠けることがありませんように。未来の世代を育成する大きな責任を担う両親や教育者たち、医療従事者や、警察関係者、愛の業に取り組む人々、特に困難にある多くの人々に光となぐさめをもたらす世界各地の宣教者たちを思います。すべての人々に感謝を表しましょう。ありがとうございます。
兄弟姉妹の皆さん、聖年が借りを免除する機会に、特に最も貧しい国々の債務を免除する機会となりますように。一人ひとりが自分が受けた侮辱を赦すようにと招かれています。なぜなら寒く暗い夜にお生まれになった神の御子がわたしたちのあらゆる借りを帳消しにしてくださったからです。御子はわたしたちを見つめ、赦すために来られました。希望の巡礼者たちよ、イエスに出会いに行きましょう。ご自身の聖心の扉をわたしたちに開け放ってくださったイエスのように、わたしたちも心の扉を開こうではありませんか。
すべての皆様に平安で聖なる降誕祭をお祈り申し上げます。