芸術家と文化界のための聖年:教皇「神の眼差しで現実を見つめよう」
「芸術家と文化の世界のための聖年」の行事が、2月15日(土)から18日(火)までバチカンで開催されている。
この間、絵画、彫刻、音楽、演劇、映画、舞踊、文学など様々な形の芸術・文化に携わる人々が参加し、巡礼やミサ、ミーティングや展示などが行われている。
16日(日)、バチカンの聖ペトロ大聖堂で捧げられたミサには、芸術・文化界からおよそ4千人が参列。入院中の教皇に代わりミサを司式した教皇庁文化教育省長官ジョゼ・トレンティーノ・デ・メンドンサ枢機卿が読み上げる、教皇があらかじめ準備していた説教に耳を傾けた。
教皇はこの説教で、同日の福音朗読箇所、ルカ福音書中のイエスが「幸いと不幸」について説教する場面 (ルカ6,17、20-26)を取り上げている。
「貧しい人々は、幸いである、神の国はあなたがたのものである。今飢えている人々は、幸いである、あなたがたは満たされる。今泣いている人々は、幸いである、あなたがたは笑うようになる」(ルカ6,20-21)。
教皇は、イエスのこの言葉は、「この世の論理を覆し、新たな眼差し、神の眼差しをもって、現実を見つめるようにわたしたちを招くもの」と指摘。「神のまなざしは、見かけを超えて、もろさや苦しみの中にさえも、美しさを認める」と述べている。
一方で、イエスの説教の後半は、「富んでいるあなたがたは、不幸である、あなたがたはもう慰めを受けている。今満腹している人々、あなたがたは、不幸である、あなたがたは飢えるようになる。今笑っている人々は、不幸である、あなたがたは悲しみ泣くようになる。」(ルカ6,24-25)とあるように、厳しい警告に満ちている。
教皇は、この幸いと不幸の対比は、わたしたちの安全をどこに置くべきか、その識別の大切さを教えている、と述べられた。
芸術と文化に携わる人々に、「皆さんはイエスの説教の革命的ビジョンの証し人となるように召されている」と教皇は語りかけ、「皆さんの使命は、美を創造するのみならず、歴史の襞に隠された真・善・美を明らかにし、声なき人に声を与え、苦しみを希望に変えること」と励まされた。
「新たな壁が築かれ、違いを互いを豊かにする機会とせずに、分裂の口実とする時代にあって、皆さんは橋を架け、出会いと対話の場を作り出し、精神を照らし、心を温めるように召されている」と述べつつ、教皇は「福音に導かれた、新しい世界を告げる芸術」の開花を祈られた。