是枝裕和監督、2022年ロベール・ブレッソン賞に
エンテ・デッロ・スペッタコロ財団、映画専門誌「チネマトグラフォ」は、教皇庁文化評議会と広報省、ローマ日本文化会館の後援のもと、映画賞「2022年ロベール・ブレッソン賞」を是枝裕和監督に授与すると発表した。
エンテ・デッロ・スペッタコロ財団は、1946年、イタリア司教協議会により、同国における映画文化の普及と推進を目的に創立された。
一方、季刊誌「チネマトグラフォ」は、1928年、カトリック映画センターによって創刊されたイタリアで最も古い映画の専門誌で、後に編集発行は上記財団に受け継がれた。
エンテ・デッロ・スペッタコロ財団と、チネマトグラフォ誌が主催し、教皇庁文化評議会および広報省の協力のもとに選考される「ロベール・ブレッソン賞」は、「人間生活の精神的意味を探る困難な歩みの、きわめて誠実かつ力強い証し」を行った映画作家に授与される賞。
同賞は2000年の設立以来、国や大陸を超えた様々な映画作家に贈られてきた。日本人監督の同賞の受賞は今回が初めて。
このたびの受賞理由として、主催者は、「日本の監督界の刺激の原点である是枝氏は、非常に内密で個人的な詩情を通し、伝統と現代性が出会い、対峙し、抱擁し合う点を示しつつ、日本映画のスタンダードの刷新に誰よりも成功した監督である。同時代作家らが自国の精神性や文化においてトラウマ(原爆、広島から福島まで)の形成を問い続けているのに対し、是枝氏は、記憶や、死、家族、愛など、究極の問題を提起しながら、ハイブリッドでグローバルな、きわめて今日的な双眼レンズを通し、嗜好や習慣の西洋化というより広い視野の中で、日本の意識を究明することを選んだ」と述べている。
「ロベール・ブレッソン賞」は、第79回ヴェネツィア国際映画祭の公式並行行事である。2022年度の同賞の授賞式は、9月6日(火)正午、ヴェネツィア国際映画祭会場・FEdSスペースで行われる。
教皇庁広報省のパオロ・ルッフィーニ長官は、「是枝監督は、内的で透明感を持つ、瞑想的な作品作りを通して、いつも物事を見る上で内側にある何かを見る可能性を与えてくれる」と語った。
岡田誠司・駐バチカン日本国特命全権大使は、「是枝裕和氏の作品には常に、さまざまな形の家族が登場し、現代における、ともすれば見過ごされてしまいがちな社会の片隅にいる人々や子どもたちを彼らの目線で、じっくりと丁寧に、ときにユーモラスに描き、言葉や文化、宗教を越えて世界中で共感を得てきた。今日、世界が多種多様な問題に直面している中にあって、是枝氏の描く世界はますます、わたしたちの心に普遍的に訴えるもの」と、日本バチカン国交樹立80周年にあたる記念すべき年に、同賞を日本の監督が初めて受賞したことに喜びを表した。